請求書や口座振替のお知らせによる経理処理のポイント

 請求書の入力は、レシートや領収書よりも内容が複雑になることがあります。金額が大きくなる場合もあり、単なる購入以外に、前渡金や立替金、源泉所得税の控除があることもあります。

 日付をとっても、発行日や締日、納品日、支払期日など複数あり、どの日付で経費を入力すればよいのか、私も最初はとても迷いました。

 口座振替のお知らせも請求書と似たフォーマットとなっている場合があり、請求書と見間違えやすい資料の一つです。

 間違えやすいポイントを整理できるように、請求書と口座振替のお知らせについての注意点を確認していきましょう。

目次

請求書や口座振替のお知らせの入力は2回必要

 請求書や口座振替のお知らせにはさまざまな日付が記載されていますが、基本的には「経費が発生した日」で入力します。この考え方を「発生主義」と言います。

 発生主義で入力すると、経理データ(仕訳)は2つ必要になります。1つは経費が発生したとき、もう1つは支払ったときです。

発生主義の経理データの例

5月16日納品  消耗品 / 未払金

6月10日支払  未払金 / 現金預金

 一方で、「現金主義」という、支払った日に経費を入力する方法もあります。こちらは、1つの経理データを入力するだけで済みますが、月々の業績を正しく把握しにくくなるため、おすすめはできません。

現金主義の経理データの例

6月10日支払  消耗品(5月16日納品分) / 現金預金

 また、内容によっては源泉所得税が引かれていたり、収益と相殺されて請求されていたりと、経理データが複数行になることもあります。

複数行になる経理データの例

顧問料 20,000円 / 現金預金 19,000円

         / 預り金(源泉所得税) 1,000円

 このように、請求書はレシートや領収書よりも内容が複雑なことがあります。経理を始めたばかりの頃は、「請求額=経費の金額」と思い込んでしまい、雑収入などの入力を忘れやすくなるので注意しましょう。

 また、経費だけが記載されている請求書であっても、内容によって勘定科目を分ける必要がある場合は複数行の経理データになります。

内容によって勘定科目を分ける場合の経理データの例

消耗品費  / 未払金

事務用品費 /

 物品やサービスの内容の重要度で勘定科目を分けるかどうかを判断すると良いでしょう。例えば、金額の大小、購入先・品目ごとの管理の有無などによって重要度を決めます。

 また、同じ勘定科目内であっても、摘要(取引の内容を記載する欄)を分けるかどうかも、重要度に応じて判断し、経理データの詳細さを調整しましょう。

経費の日付は具体的にどの日付を入力するの?

請求書に記載されているさまざまな日付のうち、どれが「経費が発生した日」となるかを具体的に見ていきましょう。入力する日付を選ぶ際の優先順位は以下の通りです。

  1. 締日
  2. 明細などにある「◯月分」の記載
  3. 納品日
  4. 発行日

 たとえば、締日が月末でない場合は、「月ごとに経費を分ける」か、「締日にまとめて経費にする」かを金額の大きさなどで判断します。月ごとに経費を分ける場合は、納品日で月ごとの経費を計算します。電子購読サービスなどの定量的に提供されるものは、日割りで金額を計算して経費にします。一方、物品の購入など定量的に提供されていないものは、納品日の記載がなければ月ごとに経費を分けて入力することができません。その場合は締日で経費を認識します。ただ、もし納品書に納品日が記載されていれば、その日付を使って月ごとに経費を分けることも可能です。

 なお、締日にまとめて経費にしている場合でも、決算月だけは月ごとに経費を分ける方法に変更します。その理由は、決算は発生主義で経費を認識する必要があり、決算期とそれ以外の経費を分けなければならないからです。

 また、「◯月分」とだけ記載されていて日付がない場合は、月末締めと仮定して月末の日付で入力します。

請求書の注意点

 請求書を受け取ったら、まずは支払期日を確認しましょう。会社の規模が大きくなると、請求書が各担当者宛で届くようになりますが、支払期日を過ぎてから支払処理を依頼されることもあります。管理体制の甘さは不正や損失、信頼の低下につながります。会社の規模が大きくなってから、管理体制を整えることは難しいので、早い段階から管理方法などのルールを決めておくことが大切です。

 請求書から経理データを入力するタイミングは、支払処理を行ってからが基本ですが、場合によっては支払処理を行う前に入力することもあります。その場合とは、経理データを早く整えることで月次損益を迅速に把握できる場合です。支払いよりも先に入力を行う場合は、すでに支払ったものか、まだ支払っていないものかを把握できるように請求書を整理しておきましょう。

 月次損益を早く確認するためには、請求書の入力を早く行うという方法もありますが、請求書自体を早く受け取れる仕組みにすることも重要です。会社によっては、2ヶ月前の経費の請求書が届くことも多いです。請求書の到着が遅いと感じたら、まずは取引先に相談し、自社でできることを行ったうえで、必要があれば取引先の変更を検討しましょう。

口座振替通知書の注意点

 口座振替に変更したばかりの頃は、「口座振替変更のお知らせ」と「請求書」の両方が届くことがあります。このうち、「口座振替変更のお知らせ」にも振込み依頼の文言が記載されていることがあるため、二重での振込みにならないように注意が必要です。

 また、口座振替のお知らせが届かない場合もあります。例えば、家賃など金額が毎月固定されている契約などです。口座振替の件数が1〜2件であれば内容を把握できますが、10件以上になると銀行口座の明細だけでは管理が難しくなってきます。口座振替が管理できなくなる前に、エクセルなどで口座振替の一覧表を作成し、定期的に確認しておくと安心です。

 水道光熱費などの少額で毎月発生する経費であれば、財務情報としての重要性が低いため、毎期継続して適用することを条件として、支払日に経費として入力することも可能です。基本は発生主義で日付を認識しますが、経理処理を簡単にするために、現金主義で処理することが認められている場合もあります。

経費にならない請求書

 すべての請求書が経費になるわけではありません。

 例えば、コンサルティング費用の着手金は、まだサービスが提供されていないので、請求書を受け取ったときは資産として処理します。サービスの提供が完了したタイミングで資産から経費に振り替えます。

 また、設備投資のように固定資産となる支出もあります。固定資産は導入した時点では経費になりません。使用量や期間に応じて少しずつ経費にしていきます。このように少しずつ費用にしていく処理のことを「減価償却」といいます。

 さらに、消耗品として購入したものであっても、経費ではなく固定資産になる場合があります。特に単価が10万円以上のものは注意が必要です。使用目的や金額、内容によって固定資産になるかどうかを判別していきます。

 このように、すべての請求書が経費になるわけではありません。まずは「これは経費になるか?」と考える習慣を持つことが大切です。

まとめ

 レシートや領収書と違い、請求書や口座振替のお知らせは内容が複雑で、入力も難しくなります。経費でない内容も含まれていることがあり、日付も色々と記載されています。

 請求書が届いた時点ではまだ支払いを行っていませんので、支払処理が漏れなく実施されるように、社内で流れを整えておくことも重要です。また、請求書の到着の遅れが、月次損益を早期に把握できない原因となっていることもあります。

 請求書や口座振替のお知らせは、単なる支払の確認だけではなく、さまざまな経理処理に関わってきます。1つ1つ注意点を確認しながら、経理の流れを整えていきましょう。

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