
「銀行口座はどのような目的で開設されますか?」
銀行の窓口で口座を開設するときに尋ねられます。多くの場合、会社を立ち上げたから、あるいは余剰資金の貯蓄用口座として使いたいといった理由で開設することが多いでしょう。初めての銀行口座は開設までに時間がかかりますが、開設できたからといって、それで安心とは限りません。
今は融資を受けていなくても、将来その銀行で融資を受ける可能性があります。たとえば、業務に関係のない支出が目立っていたらどうでしょう?銀行は、融資をしたお金が個人的な支出に使われるのではないかと不安に感じてしまいます。
銀行口座に目的を持たせることで、資金繰りもざっくりと管理することができます。銀行からの見られ方や経理処理のしやすさを考えて、銀行口座を管理することが大切です。そのための基本的な管理方法についてお話しします。
まずは「事業用」と「プライベート用」で使い分けよう
銀行の視点を意識しましょうと言いましたが、具体的に何が必要かというと、「お金の公私混同を避けること」です。冒頭でも触れましたが、銀行は融資したお金が個人の支出に使われることを嫌います。そのため、銀行口座はプライベート用と事業用に分けて管理することが重要です。そうすることで、支払った経費がプライベートで使ったものか、事業で使ったものかがはっきりします。その結果、経費の入力が正確になり、入力漏れの防止にもつながります。
プライベートと事業の区分けが明確になると、経理データの入力時に迷うことがなくなります。そのような迷いが経理作業の効率に影響するため、銀行口座の使い方を整理することが大切です。
銀行口座から引き落とされるクレジットカードについても同様です。クレジットカードも事業用とプライベート用に分けて管理しましょう。
月々の残高確認が楽をするポイント
通帳には紙のものとWEBのものがありますが、日常的に使う口座にはWEB通帳をおすすめします。WEB通帳であれば、残高を確認するために銀行に行く必要がなく、振込みもインターネット上で行うことができます。銀行によっては月々1,000円~3,000円ほどの費用がかかる場合がありますが、それだけの価値がある便利な機能です。頻繁に使う口座には導入する価値があります。一方で、ほとんど動きのない口座についてはWEB通帳にする必要はありません。そうした口座は、管理の手間を減らすために解約も検討しましょう。
日々使う口座の残高は、できれば毎日確認するのが理想です。大まかに残高、支出、収入を把握している場合でも、月末の残高が帳簿と一致していることは毎月確認しましょう。
銀行残高を確認したときに、帳簿の金額と一致していないことはありませんか?もし一致していなければ、経理データの入力漏れや誤りがある可能性があります。決算で一年分をさかのぼって確認するのは一苦労です。何の経費だったか忘れていることもあり、資料が手元にあるかどうか確認も必要になります。資料がなければ、1年分の資料の中から探すことになり、必要に応じて再発行を依頼しなければなりません。時間が経つほど手間がかかるため、少なくとも月末の残高は毎月確認する習慣をつけましょう。
資金繰りを管理するための口座の用途
銀行口座ごとに用途は決めていますか?融資を受けるために口座が開設される場合もあり、返済専用の口座として使われていることも多いです。
たとえば、振込手数料の安い銀行で開設した支払い専用の口座、融資を受けている銀行では売上が入金される口座、納税用の資金を貯蓄するための貯蓄用口座など、お金に色をつけて管理するとお金の過不足が把握しやすくなります。資金繰り表を作成することも大切ですが、用途を明確にした銀行口座があるだけでも、口座の情報からある程度の資金繰りを把握することができます。
たとえば、各口座の月々の出金額を確認すれば、平均的な支出額が見えてきます。すると、月末に最低限どのくらいの残高が必要かがわかってきます。ただし、設備投資などの大きな支出がある場合には、口座の残高だけでは資金の流れを管理しきれません。そのようなときは、資金繰り表を使って詳しく把握する必要があります。また、設備投資などの大きな支出のために専用口座を用意しておくのも一つの方法です。ただ、大きな支出がない場合でも資金繰りに不安があるときは、やはり口座情報だけでは不十分です。その場合も、資金繰り表を作成することをおすすめします。
銀行口座の用途を決めるときのポイントは、「細かく分けすぎない」ことです。細かくすると口座も増えてしまうので、管理が大変になります。まずは、「売上・貯蓄用」と「支出用」の2つの口座から始めてみましょう。
定期預金は本当に必要?
定期預金は何のために使うのでしょうか?
バブル期の定期預金は金利が6%だったことから、投資目的として貯蓄していた会社が多かったと考えられます。ですが、現在はどうでしょうか?金利が多少上がったとはいえ、0.3%程度ではお金はほとんど増えません。現在は、貯蓄のために定期預金を使っている会社が大半ではないでしょうか。
定期預金は原則として満期まで自由に引き出せない預金です。貯蓄目的であっても、普通預金や当座預金の方が、いざという時にすぐに引き出せるという点で柔軟に対応できます。ただし、ある分をすべて使ってしまうという人にとっては、引き出しにくい定期預金や積立定期預金は有効な貯蓄手段です。とはいえ、日頃からいくらまで使って良いかを把握しておくことが望ましいです。
また、融資を受けるときに、一部を定期預金に預けるよう銀行からお願いされることがあります。これは実質的には担保のような意味合いで、建前上は拘束しているわけではありませんが、実際には解約を嫌がられることが少なくありません。このような場合は「付き合い」として必要なものではありますが、融資を受ける前に定期預金の預け入れが本当に必要かどうか、交渉することも大切です。ただし、むやみに「定期預金は受け入れない」と決めつけるのではなく、担当者や銀行の意図を理解したうえで交渉する姿勢が、良好な関係の維持につながります。
定期預金は基本的には開設する必要はありません。ただ、融資に関係する定期預金については、銀行との関係性により必要となる場合もあります。その時々で、自社にとって本当に必要かどうかを判断できるようにしておきましょう。
まとめ
まずは、事業とプライベートの支出が混ざっている場合は、それを明確に分けることから始めましょう。そのうえで、銀行口座の用途を決めていくと、毎月の入出金の金額が自然と把握できるようになってきます。ただし、設備投資などの大きな支出が予定されている場合は、銀行口座の情報だけでは不十分です。そのようなときは、資金繰り表を作成して管理していきましょう。
銀行口座を上手に活用して、日々の経理を少しでも楽にする仕組みを整えていきましょう。