現金の管理はどうする?現金管理のポイント

 普段、現金は使っていますか?最近はキャッシュレス化が進んでいますが、現金でしか支払えないお店も少なくありません。現金が多すぎると、不正や粉飾を疑われる原因にもなるため、残高には注意が必要です。あらぬ疑いをかけられないように、今回は現金の管理方法を確認していきます。

目次

社長が行う現金の管理業務

 会社の現金を社長が管理している場合は不正の心配はありませんが、それでも現金の増減を把握することが大切です。現金の出入りを確認するための業務は次のとおりです。

  1. 現金出納帳の記録
  2. 現金の過不足の管理
  3. 実際の現金残高の確認
  4. 現金出納帳と実際の現金残高が一致することを確認
  5. 会計ソフトへのデータ取り込み

1. 現金出納帳の記録

 現金を出し入れするたびに現金出納帳に記録していきます。現金出納帳は預金でいう入出金データの現金版になります。手書きやエクセルなどで管理しますが、エクセルの方が計算ミスが少なく、会計ソフトへの取り込みもしやすいのでおすすめです。

 また、日々の経理を行っている場合は、会計ソフトに入力した経理データを現金出納帳の代わりとして使用することができます。

2. 現金の過不足の管理

 現金を使っていると必ず補充や預け入れが発生します。そのため、定期的に銀行を行き来する必要があります。

 現金商売の場合、売上を定期的に銀行に入金すると、売上の証拠能力が高まります。その際、売上のお金から経費の支払いをしたり、余剰な現金を追加したり、と売上金額と違う金額を入金しないように注意しましょう。毎日預け入れることが理想ではありますが、難しい場合は五十日など決まった日に入金するルールを決めておくと良いでしょう。

3. 実際の現金残高の確認

 手元の現金がいくらあるのかを定期的に確認します。現金を数えただけでは客観的に正しいとはいえないため、確認した証拠として毎回「金種表」を作成します。金種表とは、1,000円札が何枚、100円硬貨が何枚などと数えた表のことをいいます。

 確認する頻度は、現金を月に10回程度入出金があれば月末のみ、毎日1回入出金があれば10日ごとに確認するのが目安となり、使用頻度と管理のしやすさに応じて確認する時期を設定します。その他、日頃の管理状況が不正確なことが目立つ場合は確認する頻度をあげるなどの調整をしましょう。

4. 現金出納帳と実際の現金残高が一致することを確認

 現金出納帳の記録と実際の現金残高を確認したうえで、両者の残高が一致しているかを確認します。もし一致しない場合は、以下の原因が考えられます。

  • 現金出納帳への記録漏れがある
  • 現金で支払っていない経費が記録されている

 一致しない原因を特定して、現金出納帳を修正していきます。どうしても原因がわからない場合は、「事業主借(貸)」や「役員借入金(貸付金)」などの勘定科目で処理し、後日精算を行います。(なお、現金出納帳の残高が増える修正を行う場合は、収入の可能性があるため、税金の計算を考慮して、「雑収入」で処理することがあります。)

 わからない内容が多いようなら、確認の頻度を増やしたり、なるべく現金を使わないようにしたりするなどの対策が有効です。

5. 会計ソフトへのデータ取り込み

 現金出納帳を手書きで作成している場合は、その内容を会計ソフトに入力します。エクセルで作成していれば、データを加工して会計ソフトに取り込むことも可能です。件数が少なければ、コピー&ペーストで会計ソフトに直接入力しても良いでしょう。

 入力ミスや入力漏れがないかを確認するために、取り込み後は会計ソフトの残高と実際の現金残高が一致しているかを必ずチェックしましょう。

社長以外が現金を管理する場合の業務

 社長以外の従業員が現金を管理している場合は、先ほどの管理に加えて、不正の防止や確認のしくみも必要になります。そのために行うべき業務は次のとおりです。

  • 承認フローの整備
  • 不定期の監査

承認フローの整備

 現金で支払う場合は、あらかじめ社内で申請書を提出し、それが承認されたものだけを支払うルールを作ります。申請書があれば、誰が何の経費を申請し、誰が承認し、誰が現金を渡したかがわかり、責任の所在も明確になります。このしくみ自体が不正の抑止力にもなります。

不定期の監査

 もし申請書の確認が正しく行われていないことが分かると、その流れを悪用して不正が起こる可能性があります。そのため、処理が正しく行われているかどうか、不定期かつ抜き打ちで監査するのが効果的です。また、ときどき監査を行うことをあらかじめ伝えておくだけでも、不正の防止になります。

現金は持たないのが一番

 現金を持つと、それに関連する業務が増え、管理にも手間がかかります。では、どうすれば管理が楽になるかというと、最もシンプルな方法は現金を持たないことになります。現金を使わなければ、管理自体が不要です。残高を確認するのは大変なので、私も現金を使わないようにしています。

 現金を使わない方法は次の2つです。

  1. 事業用の電子決済で支払う
  2. 経費精算を利用する

1. 事業用の電子決済で支払う

 現金の代わりに事業用のクレジットカードを利用します。個人事業主であれば、QR決済なども活用できます。事業用の銀行口座から引き落とされる決済方法を使えば、現金管理の手間が少なくなります。ただ、従業員が使用する場合は、経費の上限金額やカードを使用して良い経費を決めるなどのルールが必要です。ルールの運用や確認が徹底できる範囲で、カードを持たせるのが現実的でしょう。一般的には、経費の承認者である役職の人に限ってカードを持たせることが多いです。

2. 経費精算を利用する

 経費精算とは、社長や従業員が一時的に自分の財布から経費を立て替え、あとで精算するしくみのことです。この方法であれば、会社の現金を動かさずに経費の支払いができるため、現金管理の手間がありません。経費精算の際は各個人に立て替えた金額を振込みます。給与と一緒に振り込むことで振込手数料を抑えることができますが、従業員の都合やタイミングによっては不満が出ることもあるため、状況に応じて柔軟に対応しましょう。

 現金商売では、どうしても現金が発生します。その場合は、売上のみ現金で扱い、それ以外は基本的に現金での支払いを行わないようにしましょう。現金がある以上、管理は必要ですが、使用頻度を減らすことで管理の負担も軽くなります。

現金出納帳の作成

 現金出納帳とは、現金の収支や残高を記録・確認するための帳簿です。現金での支払いや入金があったときに、その内容をエクセルや手書きなどで記録します。

 主な記載項目は以下のとおりです。

  • 日付
  • 支払先や入金先
  • 内容
  • 入金額
  • 支出額
  • 残高

 エクセルで作成している場合は、月末に実際の残高と一致していることを確認したうえで、PDFなどで保存し、記録時の領収書やレシートなどと一緒に保管します。

経費精算書の作成

 従業員などが経費を立て替えたときに、金額や経費性を確認するための資料が経費精算書です。経費精算書で申請された金額を後日精算します。

 主な記載事項は以下のとおりです。

  • 日付
  • 支払先
  • 内容
  • 支出額
  • 残高
  • 申請者
  • 精算額合計

 現金出納帳の記載事項に、「申請者」や「精算額合計」を追加したものになります。こちらも現金出納帳と同様に、金額や経費性を確認したうえで、レシートや領収書などとあわせて保管しましょう。

まとめ

 管理のしやすさを考えると、現金を持たないことが一番です。そのためには、電子決済を活用したり、経費精算のしくみを取り入れたりすると効果的です。とはいえ、現金商売ではどうしても現金が必要になります。その場合は、入出金を記録し、実際の現金と照らし合わせ、差額の原因を確認して管理しましょう。

 起業したばかりの頃であれば、財布感覚で管理することもできますが、気づかないうちに現金が膨らんでいたり、内容が分からない入出金が増えていたりすることもあります。現金の管理に不安を感じたら、管理方法について見直すタイミングかもしれません。その際に参考にしていただければ幸いです。

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