支払ったらすぐ経費?前払費用の考え方

 コンビニで買った事務用品や電車料金などの交通費は、支払ったときに経費にできますが、すぐに経費にできないものもあります。

 たとえば、保険料や家賃、コンサルティング費用などは前払いすることが多いため、「前払費用」という勘定科目で処理します。前払費用は基本的にすぐに経費にできない科目です。今回は、その理由について確認していきます。

目次

前払費用を経理処理するタイミングは?

 保険料や家賃、コンサルティング費用などで「前払費用」を使うのは、その名のとおり前払いをしている場合です。たとえば、家賃は将来の一定の期間分を先に支払うのが商習慣として一般的です。当然、部屋を借りるというサービスを支払時にはまだ受けていません。経費とするためには、原則、サービスを受けたことや商品を受け取ったことが必要です。経費にはできないので、いったん「前払費用」という資産科目として処理します。

 支払自体は完了しており、今後サービスを受ける権利があるということを考えると、この権利には価値があると考えられるため、「前払費用」は資産科目といえます。

 たとえば、支払ったら経費にできるという考え方であればどうでしょう?「利益が出ているが、支払う税金も多い。だから先に支払いをして利益を小さくしよう。」と考え、極端な例ですが、5年分の家賃を前払いして経費にすれば、利益を0円にすることもできてしまいます。これでは国は税金を徴収できません。また、正しい利益の計算という点からみると、「当期の売上」と「当期の経費」だけを考えた本当の利益が分からなくなってしまいます。

 そのため、前払いしたとしても原則は経費にすることはできないというルールになっています。前払いしてサービスをまだ受けていないものがあれば、経費となるかどうかを気にかけると良いでしょう。

前払費用はいつ経費にできる?

 「前払費用は経費にできないの?」と思われるかもしれませんが、最終的には全額を経費にできます。ービスをまだ受けていないことが問題なので、前払いした金額のうち、サービスを受けた分だけを経費として処理します。

 2年分の保険料を前払いし、契約期間が3ヶ月経過した場合は、最初に前払費用として処理した金額の24ヶ月のうちの3ヶ月分を経費として経理処理します。

前払費用の経理データ

前払費用 240 / 現金預金 240

保険料 30   / 前払費用 30

 注意が必要なのは、経過した期間という計算では経費にできないものがあるということです。保険は契約期間中の事故などに対する保証なので契約期間で一定のサービス提供があると考えられます。

 しかし、コンサルティングの経費は報告書などが提出されて完了するなど契約によってさまざまです。また、契約期間があったとしても、その期間内で完了しないこともあります。コンサルティングは階段を上るようにいくつかの段階に分けて進められます。その段階ごとにコンサルティングの内容が変わるため、サービスの質も一定ではありません。そのため、月数で単純に計算する方法は適していません。コンサルティング費用は成果物が提出されたとき、もしくは契約期間が満了したタイミングで経費にするのが一般的です。

 コンサルティング費用は長期にわたることも多いので、経費となるタイミングが翌期以降となる場合もあります。利益目標がある場合は経費のイメージが変わるため、経費となるタイミングを気にかけると決算予測などに役立つことでしょう。

支払ったときに経費にできることもある

 ここまで前払費用は経費になるまでに時間がかかるとお伝えしましたが、支払ってから1年以内にサービスの提供が完了する場合は、支払ったときに経費にできる可能性があります。それは簡易的な処理として税法で認められています。ただ、支払時に経費にするためには条件があり、なんでも支払った分を経費にできるわけではありません。その条件は話が長くなりますので、また次回お話します。

まとめ

 前払いした経費は基本的にはすぐに経費にすることはできず、前払費用という勘定科目を使用して、少しずつ経費化していきます。支払日から1年以内にサービスの提供が完了する場合は、条件によっては支払時に経費とすることも認められています。経費にできるものとできないものを見分けられるように、前払いしたものは特に注意して入力していきましょう。

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