社会保険料や住民税の納付と入力業務

 前回のブログでは、給与で社会保険料や住民税などを預かる理由を見てきました。預かった社会保険料や住民税などは納付しなければなりません。今回はその納付について、そして納付後の経理データの入力について見ていきましょう。

目次

預かった社会保険料や住民税などの経理の流れ

 預かった社会保険料などをどのように処理していくか、改めてその流れを見ておきます。

  • 従業員から社会保険料や住民税などを預かる
  • 振込み、口座振替で納付する
  • 経理データを入力する
  • 預かった分の支払いができたかを確認する

社会保険料や住民税を納付する

社会保険料や住民税は源泉所得税と違い、年金事務所や市区町村が金額を計算し、納める金額を通知してくれますので、その金額を納付します。

社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)

 社会保険料については、従業員と会社が折半するので、預かった金額の約2倍を納付します。会社負担分はおおまかに給与の15%と言われており、従業員負担分15%と合わせると納付する金額は給与の30%程になります。

 納付方法は口座振替にしていることがほとんどかと思いますが、銀行によっては対応していないところもありますので、その場合は振込用紙が月の下旬に届きます。振込み用紙で納付する場合は、納付期限が届いた月の末日であるため、届いてから振り込むまでに期間的な余裕がありません。納付期限を超えないように振込日に注意しておきましょう。

住民税

 住民税の納付額は市区町村から通知されます。前年の所得から計算されており、1月1日時点の従業員の住所がある市区町村から毎年6月ごろに会社に送付されます。

 住民税は従業員の入社や退職、長期休業などにより会社で徴収する金額が変わります。会社から異動届を提出しますが、市区町村からの通知書の送付が遅れることがあり、過納付となってしまう場合もあります。

 すると、市区町村から過納付分は返金されるのですが、会社でなく個人に還付されるので、もし会社が個人から徴収していなかった場合は支払った会社に還付されないという不具合が生じてしまいます。

 そうなると、従業員に還付されたことを確認してもらい、還付額を請求するという処理が発生してしまい、お金の流れを把握したり、請求したりと処理が複雑になるため、あらかじめきちんと管理しておく方が効率的です。その対策として、住民税額を自社内でも計算するようにしておくと良いでしょう。

入力する経理データの前提

 社会保険料や住民税を給与で預かり、年金事務所や市区町村に納付します。その一連の流れを経理データとして入力します。

 前提は次のとおりとします。

  • 給与は月末締め翌月25日支払い(額面20万円)
  • 社会保険料は15%の個人負担分
  • 住民税は月々10,000円
  • 小売業

給与に関する入力

 今回は、8月末締め9月25日支給で考えていきます。

給与の経理データ(未払分)

日付:8月31日(給与締日)

勘定科目:給与 200,000円 / 未払費用 200,000円

消費税:    対象外仕入 / 対象外

摘要:8月給与

 厳密には毎月給与を締めたときに未払給与として入力を行います。ただ、給与は毎月変わらないことが多いので、給与締日では入力せず、支払った25日に次の給与支給の経理データと合わせて入力することも多いです。

 給与締日では、まだ社会保険料などの金額を預かったわけではないので、社会保険料などの「預り金」は発生しません。

 摘要は「8月」と入れていますが、日付から判断できるので、特に記載する必要はありません。単純に「給与」だけでも良いでしょう。

 給与の経理データは、入力する手間を省くために会社全体で経理データをまとめることもありますし、従業員が少ない場合は修正の手間を省くために個人ごとの給与として経理データを作成することもあります。

 たとえば、個人の勤務時間が間違っていた場合、経理データを会社全体でまとめていると、社会保険料と住民税などの金額が固定されている科目以外は金額が変わってしまう可能性があるので、修正するよりも全て入力しなおした方が効率が良いでしょう。個人ごとに経理データを入力している場合は、修正があった人のみ経理データを修正できるため、入力しなおす手間はそれほど多くありません。

 他にも部門ごとに経理データを分けることもあります。製造業の場合は、製品を製造するための現場の従業員分の給与(製造原価報告書の賃金)と管理部門などの直接製造には関係しない従業員の給与(販売費及び一般管理費)を区別しなければ、正しい原価を計算することができません。

給与を支給したときの経理データ

日付:9月25日(給与支給日)

勘定科目:未払費用 200,000円 / 普通預金など 155,000円

                / 預り金(社会保険料) 30,000円

                / 預り金(住民税) 10,000円

                / 預り金(源泉所得税) 5,000円

消費税:全て「対象外」

摘要:        8月給与 / 8月給与

                / 8月給与 社会保険料

                / 8月給与 住民税

                 / 8月給与 源泉所得税

 給与の場合、複数の「預り金」が差し引かれているため、数行にわたって経理データを入力します。「預り金」はお金を預かったときに発生する勘定科目です。給与を支払ったときにお金を預かるため、給与支給日に「預り金」を入力します。

 「預り金」の勘定科目は、個人ごとや部門ごとなどに分ける必要はありません。ただ、この後、支払先ごと(預かった内容ごと)に預り金の残高をチェックするため、支払先ごとに分けておく方が良いでしょう。

 9月25日支給の給与から預かった「預り金」の納付日は、次のとおりです。(土日祝は考慮していません。)

  • 社会保険料:9月30日
  • 住民税:10月10日
  • 源泉所得税:10月10日

住民税に関する入力

住民税を納付したときの経理データ

日付:10月10日(納付日)

勘定科目:預り金(住民税) 10,000円 / 普通預金など

消費税:全て「対象外」

摘要:住民税

 住民税は当月分を翌月10日に支払うのが基本です。今回は、9月25日支給の給与から徴収した住民税を10月10日に納めています。住民税は次に納付する金額を預かっていると考えると良いでしょう。発生日に引きずられると、残高を確認する際に混乱してしまうので注意が必要です。

 個人住民税は会社の負担はないので、給与支給日に支給月分の住民税を徴収します。

 社会保険料の場合は会社負担分があるので、発生月(何月分の社会保険料か)を考えなければなりません。一方、住民税や源泉所得税には会社負担はないので、発生日を考える必要はなく、いつ預かったかだけを考えることになります。

社会保険料に関する入力

会社負担分の社会保険料

日付:8月31日(発生日)

勘定科目:法定福利費 30,720円 / 未払費用 30,720円

消費税:        非課税 / 対象外

摘要:社会保険料

 まず、会社負担分の社会保険料を経理データにします。納付金額の通知書が届いたら、いつの分の社会保険料であるか記載されているので、その日付で入力します。8月分と記載があれば、8月中の日付(1日〜31日)で入力すれば問題ありません。

 左側の勘定科目は「法定福利費」を選択します。法定福利費とは、法律上支払わなければならない従業員を保護するための費用で、健康保険と厚生年金、雇用保険、労災保険にあたります。

 右側の勘定科目は8月分の社会保険料の未払いなので、「未払費用」を選択します。「未払費用」の勘定科目は、取引先コードや補助科目などで何の未払い分かがわかるようにしておくとチェックするときに楽になります。

 社会保険料は従業員と会社で折半しますが、「法定福利費」の金額が720円だけ「預り金」と違います。これは社会保険料の通知書に記載されている「子ども子育て拠出金」の金額分(賃金の0.36%)です。この拠出金は全額会社負担となるため、給与で預かった社会保険料の中には入っていません。そのため、この金額分だけ「預り金」より多くなります。

 社会保険料は保険なので、「法定福利費」の消費税は非課税です。「未払費用」はものやサービスといった消費するものではないので、消費税の課税対象外です。

 摘要は簡単に「社会保険料」とだけ記載しています。他に記載するとしたら「8月分」や「会社負担分」がありますが、日付で8月分であることがわかりますし、「法定福利費」という勘定科目で会社負担分であることがわかるので、記載しなくても特に支障はありません。

社会保険料を支払ったときの経理データ

日付:9月30日(納付日)

勘定科目:未払費用 30,720円 / 普通預金など 60,720円

      預り金 30,000円 /

消費税:すべて「対象外」

摘要:社会保険料

 8月分の社会保険料は9月末までに納付するため、納付日を基準にして考えると、9月25日の給与で徴収した分は8月分の社会保険料ということになります。徴収した社会保険料を同じ月に納付するため、月末が土日祝でない場合、社会保険料に関する預り金の残高は毎月0円になります。納付日が土日祝である場合、翌営業日に納付日がずれるため、社会保険料の納付がない月も出てきます。残高が0円にならないこともあるため、残高をチェックするときは月末の曜日に注意しましょう。

 勘定科目の右側は社会保険料の支払いなので「普通預金」などを使用します。左側は8月末に入力した会社負担分の「法定福利費」に対する「未払費用」と9月25日支給の給与から預かった社会保険料(個人負担分)の「預り金」を使用します。この「未払費用」と「預り金」の合計が納付額となるはずですが、不一致の場合はその原因を確認しましょう。

まとめ

 社会保険料や住民税は従業員からお金を預かって、それを納付していきます。納付や徴収を行ったら、まずは経理データの入力を行っていきましょう。

 社会保険料は会社負担分があり、経費の入力を忘れやすいので注意が必要です。

 入力金額がたとえ間違っていたとしても、次に行う残高のチェックで間違いに気づくので、それを修正すれば問題ありません。とにかく、まずは間違いを気にせず、経理データを入力してみましょう。

 次回は、預り金の残高をどのようにチェックするかをお話しします。

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