利益から何を読み取るか

 毎月、「今月の利益はいくらだったか」を確認する人が多いでしょう。利益と一言でいってもさまざまな利益があります。

 今回はそれぞれの利益から何を読み取ればよいのかをお話していきます。

目次

利益の種類

 まずは、利益の種類にはどんなものがあるか見てみます。次の利益が一般的です。

  • 売上総利益(粗利)
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益

 これらが損益計算書で確認できる利益です。その他、限界利益やEBITDAなどがあり、確認したい内容によって見るべき利益を使い分けています。

 では、それぞれの利益について、利益の意味やその利益から何が読み取れるかを見ていきます。

売上総利益(粗利)

売上総利益の計算

売上総利益 = 売上高 ー 売上原価

 売上総利益はいわゆる粗利と呼ばれる利益です。たとえば、A商品を80円で仕入れて100円で売ると20円の利益が出ます。この売上から原価を差し引いた利益のことを売上総利益といいます。

 売上総利益は売上から原価を差し引くだけなので、売上と原価の関係がよく分かります。売上総利益が低い場合は売上原価が高くなるといった相関関係にあるので、売上総利益を確認する=売上原価を確認する、と言っても良いでしょう。

 そこで、原価率に着目して売上総利益の変化をチェックします。

原価率の計算

原価率 = 売上原価 ÷ 売上高

 具体的には、前期の決算書から原価率を把握して、今月の原価率が大きく変動していないかどうかをチェックします。

 私の感覚になりますが、普段の原価率より2%の変動があれば違和感を感じます。営業利益率が全業種平均で5%と言われていますが、原価率が2%増えると利益は2%減少します。そう考えると、2%の原価率は決して小さい数字ではありません。

 違和感を感じたら、その原因は何かを調べましょう。たとえば、販売量が変わらないのに原価率が増加している場合は、仕入単価が増加していると考えられます。販売量は変わらず、売上高が増加しており、原価率も増加しているような場合は、仕入値の上がり幅の方が販売価格の値上げ幅よりも上回っていると考えられます。

 これら以外にも、棚卸が売上原価に影響するので、棚卸が正しく行われているかどうかを確認することも必要です。

営業利益

営業利益の計算

営業利益 = 売上総利益 ー 販売管理費

 営業利益は本業によって稼ぐ力を表しています。粗利は原価だけでしたが、営業利益はそれに加えて商品を販売するまでの経費や管理するための経費を差し引いた利益です。ここが赤字の場合は本業がうまくいっていないと読み取れます。

 たとえば、営業利益が赤字だったとしましょう。その原因が販売管理費にあるのか、売上総利益に原因があるかを確認します。

 販売管理費が原因であれば、前年以前と当期を比較して、増加した経費があるかどうかをチェックします。特に原因となる経費が見当たらない場合は、不要な経費を支払っていないかをチェックし、経費削減を行います。

 売上総利益が原因である場合は、前に述べたとおり、売上か売上原価に問題があります。

経常利益

経常利益の計算

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

 経常利益は、営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を差し引いた利益です。営業外収益や営業外費用とは、本業に関係するものではなく、毎年発生する収益や経費のことをいいます。株式の配当金や融資の利息などが「営業外」にあたります。

 この利益は本業の利益だけでなく、毎年発生する本業以外の経費や収益も加味した利益を表しており、毎年このぐらいの利益を生み出せるという指標にもなります。

 ここが黒字であれば、ひとまず債務超過にはなりづらい体質にはなっています。もちろん、この後の当期純利益が最終利益ではあるので安心はできませんが、毎年は発生しない突発的な経費がない限りは最終利益は黒字で落ち着くはずです。

税引前当期純利益

税引前当期純利益の計算

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

 税引前当期純利益は、毎年発生するものではない突発的に発生した経費(特別損失)や収益(特別利益)も加味した利益です。この突発的な経費や収益には、固定資産の売却などによる利益や損失があります。

 税金(法人税など)を差し引く前の利益で、当期にどれくらい稼げているかを表す利益ですが、あまり確認することはありません。当期純利益が最終利益となるため、そちらで確認しています。

当期純利益

当期純利益の計算

当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等

 当期純利益は、法人税なども考慮した最終利益であるため、この金額が当期に儲けた額になります。

 規模が大きい会社であれば、経理処理によっては法人税の金額と税引前当期純利益に相関関係がない損益計算書ができることがありますが、小規模の会社であれば複雑な会計処理(税務と会計でそれぞれ違う処理)はほとんどないため、特に気にかける必要はありません。そのため、税引前当期純利益を確認するよりも当期純利益を確認した方が分かりやすいでしょう。

限界利益

限界利益の計算

限界利益 = 売上 - 変動費

 限界利益とは、売上に応じて変動する経費を売上から差し引いた利益のことです。この売上に応じて変動する経費のことを変動費といいます。逆に売上とは連動しない経費を固定費と呼びます。

 この固定費を賄える限界利益を得ることで営業利益は黒字になります。変動費と固定費の考え方により、赤字と黒字の境になる売上を意識できるようになります。

 売上総利益も売上に応じて変動するという点では似ていますが、限界利益はもっと範囲を広げ、本業全体の経費の中から売上と連動して変化する経費を差し引いています。

 たとえば、ネット上で商品を販売している場合、販売したときの送料は、損益計算書上、販売管理費として表示されますが、売上が上がるほど送料の総額は大きくなるため、限界利益を計算する上では変動費となります。

 この変動費を把握することで、本業での利益が0円となる境目の売上を確認できます。この売上のことを損益分岐点売上高と言います。

 とはいえ、限界利益が参考になるのは主に製造業や修理業です。サービス業や小売業、飲食店などは基本的に売上原価以外に変動費がほとんどなく、売上原価の中にも固定費がほとんど含まれていないため、「限界利益 ≒ 売上総利益」となることが多いでしょう。

EBITDA

EBITDAの計算

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

 EBITDAは上記の算式以外にも様々な求め方がありますが、最も簡略化されたものが上記の算式です。

 営業利益は本業から得られた利益であり、売上から売上原価と販売管理費を差し引いて計算します。この販売管理費の中に減価償却費が含まれています。減価償却費は、現預金を支払うことのない経費であり、上記の算式で減価償却費を加算することは営業利益を現預金の増減に近づけることを意味します。そのため、この利益は本業から得られる簡略化されたキャッシュフロー(現預金の増減)を表していると言えます。

 営業利益が赤字であったとしても、EBITDAが黒字となるのであれば、現預金は本業では増加していることになります。そのため、設備投資と借入金の返済がEBITDAで賄えるかがポイントです。それを賄えない場合は、貯蓄を取崩すか、融資を受けるか、固定資産を売却するなどの方法で資金を集めることになります。

 また、忘れてはならないのがEBITDAは簡略化されたキャッシュフローであるという点です。おおまかには現預金の増減を把握できますが、もし数値が芳しくないときはその原因を探るのにEBITDAを使うのは適していません。

 原因を調査する場合は、次の資料を使うと簡単なキャッシュフロー計算書を作成することができます。

日本公認会計士協会
中小企業のためのキャッシュ・フロー計算書作成シート

 小規模の企業であれば、この資料で充分です。

まとめ

 主に損益計算書に載っている利益を見てきました。ひと口に利益と言っても様々ですが、共通しているのは、全てが結果を表していること。数字に違和感を感じた場合、その原因は利益では分かりませんが、問題がありそうな箇所に見当をつけることができます。

 毎月利益を確認することで、自社にとって大切な数字は何か?自社の課題やその対策によってどう変わったか?を把握できるようになるでしょう。

 利益を確認するためにも、毎月、経理データを入力して、帳簿を作成しておきましょう。

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